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大阪高等裁判所 平成8年(ネ)2135号 判決 1997年1月30日

奈良市登美ケ丘五の一の一三

控訴人

黒田重治

大阪市北区西天満二丁目四番四号

被控訴人

積水樹脂株式会社

右代表者代表取締役

増田保男

右訴訟代理人弁護士

俵正市

寺内則雄

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

事実及び理由

一  当事者の申立て

1  控訴人

一 原判決を取り消す。

二 被控訴人は、控訴人に対し、金五〇〇万円及びこれに対する平成七年四月二〇日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

三 訴訟費用は、第一、二審とも、被控訴人の負担とする。

(控訴人は、当審において、請求を減縮した。)

2  被控訴人

主文同旨

二  事案の概要及び当事者双方の主張

原判決の事実及び理由のうちの「第二 事案の概要」、「第三 争点に関する当事者双方の主張」にそれぞれ記載されているとおりであるから、これらを引用する。

三  当裁判所の判断

当裁判所も、控訴人の本訴請求は理由がないものと判断する。その理由は、原判決の事実及び理由のうちの「第四 争点1(被告製品の製造販売は、本件実用新案権を侵害するものであるか)についての判断」に示されているとおりであるから、これを引用する。

(以下、略語は原判決の例による。)

控訴人は、<1>被控訴人が昭和四五年一二月二九日に出願した特許(発明の名称「合成樹脂被覆金属管の製造方法」)の明細書(甲第八号証参照)の「発明の詳細な説明」にある記載(「又、該製造方法においては金属管の両端に嵌挿する栓体の嵌挿部の外形が金属管の内形と一致しており、該栓体を金属管の両端に嵌挿した後、該金属管を押出機の金型中に導入して金属管の外壁に樹脂を被覆すると共に栓体の外壁にも樹脂を被覆するのであるが、その際、管内の空気が樹脂の溶融熱でもって加熱されて膨張しても栓体の為に逃げ道がなく遂には該空気圧によって栓体が金属管から抜け出すという欠点があった。」)をみると、右特許出願前の合成樹脂被覆金属管の製造方法には、栓体が金属管から抜け出すという欠点があったことが明かであるから、右特許出願前の昭和四四年夏ころはまだ被告特許発明を実施することは技術的に不可能であった、<2>被控訴人は昭和五一年一二月一七日に「支柱及びその製造方法」((4) 栓体部分の先端を円錐状に尖鋭とした、特許請求の範囲(1)乃至(3)の支柱)(甲第九号証)の特許出願をし、その実施品として被告製品の製造販売を始めたものであり、被告製品はこれより先に出願されていた本件考案の技術的範囲に属する旨の主張をする。

しかしながら、被控訴人は既に昭和四一年一〇月一一日には熱可塑性樹脂被覆金属管の製造方法について特許出願し(乙第一一号証)、その後、昭和四三年九月一七日に被告特許発明の出願をしたものであるところ、被告製品を被告特許発明の実施品であるとみるべきことについては原判決説示のとおりである。そして、控訴人が指摘する右二つの特許出願は、いずれも合成樹脂被覆金属管ないし支柱の製造方法に係るものであって、従来の製造方法にみられた問題点を解決しようとするものであり(右昭和五一年一二月一七日出願の発明は、当初、「支柱及びその製造方法」に関する発明として出願されたが、結局、「支柱の製造方法」に関する発明として、公告、登録された。-乙第一三号証)、右製造方法改良の事実と、被告製品を被告特許発明の実施品であると認めることとは何ら矛盾するものではない。さらに、控訴人は、被告製品が製造販売された時期を問題にするが、およそ、被告製品が本件考案の出願(昭和四八年一一月八日)より前の昭和四三年九月一七日に出願された被告特許発明の実施品であると認められる以上、その製造販売時期のいかんによって後願に係る本件実用新案権に対する侵害の余地が生ずるというものでもないから、この点に関する控訴人の主張は失当である。

四  よって、本件控訴は理由がないから、控訴費用の負担につき民訴法九五条、八九条を適用し、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 上野茂 裁判官 高山浩平 裁判官 長井浩一)

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